「帰国子女入試では、どのような準備が必要なのかわからない」
「日本の大学でうまく過ごせるのか不安がある」
現在海外の高校に通っているけれど、日本の大学に進学したい方の中には、上記のような悩みを持つ方も多いでしょう。日本の受験制度や志望校合格までの道のりがわからないと不安ですよね。
そこで、今回の記事では特に以下3点を解説します。
- 帰国子女入試とは何か
- 帰国子女入試で必要な準備
- 志望校を選ぶ際に気をつけたいポイント
本記事を通して、帰国子女入試に関わる疑問を解消し、進路選択に向けた次の一歩を踏み出しましょう。
※本記事で記載の大学情報は学部や年度によって変わることがあります。最新情報は各大学公式サイトや募集要項などをご確認ください。
この記事の目次
帰国子女入試とは?出願資格・入試時期・選考方法
そもそも帰国子女入試はどのような制度なのか、基本情報を4つにまとめました。
- 帰国子女入試とは?他の入試形式との違い
- 帰国子女入試の主な出願資格
- 帰国子女入試が行われる時期
- どのような能力が求められる?帰国子女入試の選考方法
一つずつ解説します。
帰国子女入試とは?他の入試形式との違い
帰国子女入試とは、一定期間海外に在住し、外国の教育課程で学んだ生徒を対象とした入試です。
グローバル人材の育成を目的に、海外での経験を評価する選抜方法が採用されています。「帰国生入試」・「海外修学経験者」などとも呼ばれ、グローバル人材の育成を目的に、海外での経験を評価する選抜方法が採用されています。
他の大学入試との違いは以下のとおりです。
入試形式 | 対象者 | 選考方法 | 主な評価ポイント |
帰国子女入試 | 一定期間海外在住者 | 書類審査、面接、学力試験など | 語学力、国際経験、多文化理解力 |
一般入試 | 国内外を問わずすべての受験生 | 学力試験が中心 | 語学力、国際経験、多文化理解力 |
総合型選抜 | 幅広い能力・経験を有する受験生 | 書類審査、面接、実績評価など | 学力 |
推薦入試 | 指定校の生徒など | 調査書による書類審査、面接、小論文など | 高校での学業成績、人物評価 |
海外での生活体験を重視し、学力だけでなく語学力や国際性を総合的に評価する点
が大きな特徴です。
帰国子女入試にもさまざまな形式がある
帰国子女入試の中にも、さまざまな形式があります。ここでは、「入試成績重視型」「現地成績重視型」「折衷型」の3つの形式の特徴をご紹介します。
形式 | 概要 | 重視する点 |
入試成績重視型 | 大学独自の試験の結果を重視 | 試験の成績 (学力試験・小論文・面接) |
現地成績重視型 | 海外在籍校の成績証明書や推薦書などの提出書類を中心に選考 | 現地での学業成績、推薦状況 (面接を課すことも) |
折衷型 | 現地成績と大学の試験を組み合わせて総合評価 | 現地成績と入試の試験の双方 (書類審査・面接も加味する場合あり) |
受験を有利に進められるよう、自分に合った形式を選びましょう。
帰国子女入試の主な出願資格
帰国子女入試では、出願条件として以下のような条件が求められることが多いです。
- 高校最終学年を含んで2年以上海外の学校に継続して在籍していること
- 海外の高校を卒業していること、または卒業見込みであること
- 外国(滞在国)の大学入学資格を有していること
- 英語の能力を証明する書類(基準以上の英語外部試験の結果など)があること
- 日本国籍または日本の永住者・特別永住者の在留資格を有していること
また、以下のような条件を定めている学校もあります。
- 日本の高校への在籍が一定期間未満であること
- 海外の高校を卒業してから1~2年未満であること
まずは自分の状況と条件が合う学校があるか、確認してみてください。
帰国子女入試が行われる時期
帰国子女入試の実施時期は大きく「春入学」と「秋入学」で異なります。
「春入学」は、他の日本の大学生と同様に、4月に入学式を迎えます。
私立大学の春入学の試験の多くは7~8月に出願が始まり、9月に試験が行われます。
一方、国公立大学の場合は11月頃に試験を行う大学と、一般選抜と同じ2~3月頃に試験を行う大学に分かれます。
「秋入学」は、海外の多くの大学と同じ9月に入学式を迎えます。
秋入学の入試時期は大学によってまちまちですが、早い大学だと入学の1年前の秋ごろから出願が始まります。
出願時期を複数回設けている大学もあり、その場合は入学年の1~3月や、遅い大学だと6月以降に出願できる場合もあります。
志望校の出願時期・入試実施時期を早めに調べ、対策をスタートしておくことが重要
です。
どのような能力が求められる?帰国子女入試の選考方法
帰国子女入試では、主に次のような能力が評価されます。
- 語学力
- 学力
- 多文化理解力・国際感覚
大学によって重視する能力は異なりますが、語学力、学力、国際経験などを総合的に判断し、合格者を決定します。
書類審査や面接のみで合否が決まる場合もありますが、大学・学部によっては小論文や学部独自の学力試験を課すこともあります。
また、東京大学などの一部の国公立大学では、一般選抜の受験生と同じ入試問題を解く必要があることも。
それぞれの大学の出題内容に沿って対策を講じ、本番に臨みましょう。
帰国子女入試に合格するためにやるべき5つの準備
帰国子女入試は一般入試とは異なる選考方法が行われる場合も多いため、合格に向けた準備が必要です。
以下、帰国子女入試に合格するための5つの対策を紹介します。
- 出願資格を満たすための準備を早めに行う
- 出願書類は十分に時間をかけて準備する
- 日本語能力を高める
- 面接や小論文対策を行う
- 学科試験対策を行う
それぞれ一つずつ解説します。
1.出願資格を満たすための準備を早めに行う
帰国子女入試の出願資格には、海外に在住していた期間や保護者の職業などの条件があります。
また、出願資格として英語外部試験のスコアを求められる場合も。
必要なスコアや評価の対象となる英語外部試験の例として以下がありますが、大学によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
- 英検
- TOEFL iBT
- TOEIC
- 国連英検
- IELTS
- TEAP&TEAP CBT
- GTEC
- ケンブリッジ英検
外部英語試験は、試験の結果が発表されるまでに時間を要する場合があります。十分に余裕を持って対策を始め、早めに受験しましょう。
帰国子女入試の出願条件として求められる英語外部試験のスコアは?
帰国子女入試の出願条件として求められる英語外部試験のスコア例は以下のとおりです。
上智大学 外国語学部英語学科 | ・英検:準1級 ・TOEFL iBT:72 ・TOEIC:LR785&SW310 ・国連英検:B級 ・IELTS:5.5 ・TEAP:330(各70) ・TEAP CBT:590 ・GTEC:1180 ・ケンブリッジ英検:162 |
青山学院大学 国際政治学科・国際経済学科・国際コミュニケーション学科 | ・英検:準1級 ・TOEFL iBT:61点 ・IELTS:5.0 |
獨協大学 外国語学部英語学科 | ・英検:CSE2150 ・TOEFL iBT:58 ・TOEIC:950(L&R+S&W) ・IELTS:4.5 ・TEAP:270 ・TEAP CBT:445 ・GTEC:995 ・ケンブリッジ英検:150 |
受験を検討している大学の出願要項を確認し、求められる英語力の基準を把握しておきましょう。
2.出願書類は十分に時間をかけて準備する
帰国子女入試に出願するにはさまざまな書類をそろえる必要がありますが、中には翻訳公証や渡日書類手続きに2ヶ月以上の期間を要する場合があります。
出願時期に焦ることがないように、余裕を持った準備が重要です。
帰国子女入試に必要な主な出願書類と留意点は以下のとおりです。
1.入学願書、志望理由書、自己PR文
入学願書は、出願したい大学から取り寄せます。提出する文章は日本語で記載する必要があるため、文章を丁寧に内容を見返す時間をとっておくと安心です。
2.高校の卒業証明書または卒業見込み証明書
卒業証明書、もしくは卒業見込み証明書の提出が求められます。
3.推薦状
大学によっては、出身高校の学校長や教師が作成した推薦状が必要です。英語や現地語で記載されている場合は、翻訳した文章も求められることがあります。
4.高校の成績証明書
生活記録証明書や成績証明書を用意します。大学によっては高校3年間の成績証明書の提出を求められるため、途中で転校した場合は前に在籍していた高校の成績証明書の提出も必要です。転校経験のある方は事前に調べておきましょう。
5.海外在留証明書
海外在留証明書は海外での在留期間や目的を証明する公的書類です。保護者の海外赴任に同伴している場合、保護者が勤める企業が発行する証明書も利用できます。
6.英語外部試験の結果
TOEFLやIELTSなどの結果を送る必要があります。募集要項を確認し、以下の項目に注意しましょう。
- 受験期間…多くの大学では受験期間を指定しています。出願締め切りの1~2年前が目安です。
- 受験方法…TOEFLやIELTSは自宅受験も可能ですが、自宅受験の結果が利用できない大学もあります。
- 提出方法…大学によって異なります。原本のみ認める大学や、実施団体からの直送を求める大学もありますので注意が必要です。
上記はあくまでも一例です。必要な書類は大学によって異なるので、受験校の募集要項を確認しましょう
。
一時帰国して手に入れる書類の例
提出書類の中には、一時帰国しないと手に入らないものもあります。余裕を持って書類の準備を済ませるためにも、早めに帰国時期を検討しておきましょう。
一時帰国が必要となる主な書類は以下のとおりです。
1.戸籍抄本
帰国子女入試は、基本的に日本国籍がなければ受験できません。戸籍抄本は海外では取得できないため、日本に一時帰国して取得するか郵送手続きを行う必要があります。
日本国籍を証明するだけであれば、パスポートの写しを利用できる場合もあります。
2.卒業証明書や成績証明書(日本の学校のもの)
日本の学校に在籍していた期間がある場合、その分の卒業証明書や成績証明書が必要です。戸籍抄本と同様、日本に一時帰国して取得するか郵送手続きを行いましょう。
3.日本語能力を高める
帰国子女入試では出願書類はもちろん、面接や小論文、学科試験でも日本語が用いられます。
海外で長期間生活していると、日本語での会話力だけでなく、読解力や文章力も低下してしまいがちです。不安のある方は早めに対策しましょう。
大学・学部によっては、出願時に日本語能力試験(JLPT)の結果の提出が求められることもあります。
4.面接や小論文対策を行う
帰国子女入試の面接では、自己PRや志望動機について質問されます。自分の経歴や経験、長所を的確に伝え、志望理由を論理的に説明できるよう準備することが重要です。
また、小論文対策では、過去問や模擬問題に取り組み、添削を受ける機会を作りましょう
。実際に小論文を作成し添削してもらうことで、克服すべき課題が見えてきます。
5.学科試験対策を行う
帰国子女入試の学科試験では、日本の教育課程とは異なる範囲や科目から出題される可能性があります。
志望大学の過去問題や予想問題を活用し、求められる学力を把握したうえで対策を立てましょう。
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海外のどの地域に住んでいても、一人ひとりに合わせた受験サポートが受けられます。
海外在住経験のある教師や帰国子女への指導経験のある教師も多数在籍しているため、安心して帰国子女入試の対策を依頼することが可能です。
また、完全マンツーマン授業でスケジュールも柔軟に調整できるため、時差を気にせずに受講できるのもうれしいポイントです。
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帰国子女の志望校選びで押さえておきたい3つのポイント
帰国子女の方は、日本の高校とは異なる環境で学習してきているため、志望校を選ぶ際には日本の高校生とは違うポイントを押さえる必要があります。
ここでは、帰国子女が志望校選びで意識したい3つのポイントをご紹介します。
- 出願資格を満たしているか
- 関心のある分野を学べるか
- 帰国子女へのフォローが充実しているか
以下、順番に解説します。
1.出願資格を満たしているか
まずは各大学の出願資格を確認し、出願資格を満たしているかチェックしましょう。
帰国子女入試では一定の英語力が求められるので、TOEFLやIELTSなどの語学スコアの基準を満たす必要もあります。
各大学の求める条件を見たうえで、試験科目や過去問題を分析し、自分の強みを発揮できる大学を選ぶと良いでしょう。
「秋入学」「春入学」のどちらが良いか確認・検討する
帰国子女の多くが6月頃に高校卒業を迎えます。大学入学を「秋入学」にするか「春入学」にするかで、受験や帰国後のスケジュールが変わる点に注意が必要です。
秋入学と春入学、それぞれのメリットは以下のとおりです。
・高校卒業から大学入学までの空白期間が短い
・海外の大学と併願がしやすい
・高校卒業から大学入学まで余裕をもって準備できる
・同時期に入学する同級生が多い
▶出願資格を満たしているか
▶語学試験対策など入試準備が間に合うか
▶帰国するタイミングと手続きの猶予期間は十分か
出願資格、試験内容、帰国のタイミングを踏まえて総合的に判断しましょう。
いくつかのパターンを想定し、後悔のない選択ができるよう、早めの検討をおすすめします。
2.関心のある分野を学べるか
大学のカリキュラムやゼミ、研究室の活動内容、教授の専門分野などから、自分の関心分野を深く学べるか確認しましょう。
▶カリキュラム
▶ゼミ・研究室
▶図書館・施設
▶学習支援体制
▶語学環境
有意義な大学生活が送れるよう、自分の希望に近い大学をリサーチしてみてください。
大学情報を集める際はオープンキャンパスや資料請求を活用すると◎
海外在住の生徒が大学情報を集める方法には、以下があります。
- 資料を取り寄せる
- 一時帰国してオープンキャンパスに参加する
- オンラインのオープンキャンパスを活用する
ある程度志望校が絞れてきたら、オープンキャンパスなど直接情報を収集できる機会に参加してみましょう。
実際に見学や質問ができれば、志望校選びの判断材料が得られます。
3.帰国子女へのフォローが充実しているか
日本語力の差や文化の違いから、学習面・生活面でストレスを感じたり、悩んだりしてしまう場合も少なくありません。
帰国子女のサポート体制が整っているか確認しておくと安心です。
また、英語で学習できる環境を望む人は、英語による授業が用意されているかをチェックすると良いでしょう。
▼学習面
・日本語力の不足を補う補講などがあるか
・英語による授業や資料が用意されているか
・チューター制度や学習相談窓口が整備されているか
・帰国子女専用の生活相談窓口があるか
・住居確保や生活サポートを行うサービスがあるか
・帰国子女同士のコミュニティやサークルが存在するか
・帰国子女の教職員や学生が在籍しているなど帰国子女への理解があるか
・宗教的&文化的な背景への配慮があるか
・国際色豊かなキャンパスライフが送れる環境があるか
環境選びは、スムーズな大学生活を送るための第一歩
。実際に大学に在籍している帰国子女から生の声を聞くのもおすすめです。
帰国子女の大学受験に関するよくある質問
最後に、帰国子女の大学受験に関するよくある質問とその解答を紹介します。
- Q.国際バカロレア入試(IB入試)との違いは?
- Q.帰国子女入試が有利になる資格・スコアは?
- Q.帰国子女入試で落ちたら一般入試で不利になる?
帰国子女入試の不安を払しょくし、志望校合格に向けてスムーズに準備を進めましょう。
Q.国際バカロレア入試(IB入試)との違いは?
国際バカロレア入試は、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)の教育カリキュラムを修了した人を対象とした入試制度です。
国際バカロレアの認定を受けている学校は、令和6年3月時点で世界160の国と地域において約5,800校あります。
日本にも認定校が存在し、高校生が対象となる国際バカロレア認定校の「DP認定校」は令和6年3月時点で68校です。
帰国子女入試は海外在住経験が出願条件に含まれますが、国際バカロレア入試では海外在住経験がなくても国際バカロレア資格を保有していれば出願できます。
なお、国際バカロレア資格を持っていることで帰国子女入試の受験資格がクリアできたり有利になったりするため、帰国子女入試を検討している場合は取得を検討すると良いでしょう。
Q.帰国子女入試で落ちたら一般選抜で不利になる?
帰国子女入試で不合格になっても、一般選抜の出願資格に影響はありません。多くの大学では、帰国子女入試と一般選抜は別の選抜区分で実施されているからです。
万が一、帰国子女入試と一般選抜の両方が不合格の場合は、翌年に受験し直すことになります。
そのリスクを避けるためにも、入試形式を分散させるといった対策を取るのが望ましいでしょう。
まとめ
今回の記事では、日本の大学を受験することを検討している帰国子女の方がやるべき準備や、志望校の選び方について解説しました。
重要な3つのポイントを振り返りましょう。
- 帰国子女入試で求められる条件や入試の内容は大学によってさまざま
- 必要書類の準備や志望校のリサーチを考えると、早めのスタートが重要
- 帰国子女入試・一般入試両方の受験を視野に入れ、受験対策をすると安心
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