「いま海外に住んでいるけれど、子どもを日本で中学受験させたい」
「帰国子女であることを活かして中学受験を有利に進めたい」
海外在住の家庭や、海外から帰国した家庭にとって、子どもの進学先選びは非常に悩ましいことでしょう。
学校によっては帰国子女のための受験枠を設けていることもあり、自分の強みを生かせる入試方式を選ぶことが合格の近道となります。
本記事では、帰国子女の中学受験において、どのように学校を選び、受験対策を進めるべきかを詳しく解説します。帰国子女で中学受験を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の目次
帰国子女の小学生の中学受験にはどのような選択肢がある?
帰国子女の小学生が中学受験をする場合、大きく2つの選択肢があります。一般受験生と同じ試験を受ける「一般枠」での受験と、帰国子女のために用意された「帰国子女枠」での受験です。
▼一般枠での受験
帰国子女であっても、一般の受験生と同様の入試を受験できます
。この場合、帰国子女としての特性や経験は直接的には評価されません。
▼帰国子女枠での受験
学校によっては、帰国子女だけが受験できる入試方式を用意していることがあります。呼び方は学校ごとに異なりますが、「帰国子女枠」「帰国子女入試」「帰国生入試」等
と呼ばれることが多いです。
多くの学校では、帰国時期や滞在期間、語学力などの条件を満たせば、帰国子女枠で受験できます。「一般枠」と「帰国子女枠」のどちらの方法にせよ、子どもの強みに合わせた受験方法を選ぶことが大切です。
まずは帰国子女入試制度の特徴や受験に向けた対策を確認しておきましょう。
帰国子女枠で受ける中学受験の基本情報
まず、帰国子女枠での中学受験がどのようなものなのか、具体的に解説していきます。
- 帰国子女枠の中学受験とは?
- 帰国子女枠の中学受験で求められる力
- 帰国子女枠の中学受験スケジュール
- 出願条件
- 受験科目
帰国子女枠に関わる基本情報を押さえた上で、どの枠で受験するのかを検討してみてください。
帰国子女枠の中学受験とは?
帰国子女枠による中学受験は、海外で一定期間教育を受けた小学生を対象とした入試制度です。帰国子女枠では、帰国子女の持つ特性や背景を考慮した試験が行われます。
語学力や異文化理解の経験を重視する学校もあり、一般受験とは異なる観点での評価が行われる
点が特徴です。
近年では帰国子女の受け入れを増やしている学校も増えているため、海外在住経験のある受験生にとってチャンスが増えているでしょう。
また、最近では帰国生入試の受験資格から「海外在住歴」をなくす学校も出てきています。日本国内にいながらも海外在住者と変わらない英語力を身につけている受験生にも入学してほしいということです。
英語力を重視した入試が行われる可能性が高いため、英語圏以外に住んでいた場合や、英語力に自信がない場合は避けたほうがよいでしょう。
帰国子女枠の中学受験で求められる力
帰国子女枠の中学受験では、一般入試とは異なる能力が求められます。特に重視されるのは以下の4点です。
〇語学力
多くの学校では、英語を含む外国語能力が重視されます。英語での面接や作文が課されることもあり、高い語学力が求められるでしょう。
〇異文化理解
海外での生活経験を活かした、異文化理解や適応力が評価されます。国際的な視野や多様な価値観を持つことが重要です。
〇日本語能力
日本語での学力試験が課される学校もあるため、日本語の読み書きや理解力も必要です。
〇学力
基本的な学力も評価対象です。特に国語、算数、理科、社会といった主要教科の学力が問われることがあります。
帰国子女枠の中学受験で求められる力を理解した上で適切に準備することが、合格への鍵となるでしょう。
帰国子女枠の中学受験は難しい?
帰国子女枠の中学受験は、一見すると一般受験より有利に思えるかもしれませんが、実際には難易度が高い場合もあります。特に、以下の点で難しさを感じる受験生が多いようです。
〇学習内容にギャップがある
帰国子女枠とはいえ、国語や算数など日本のカリキュラムに基づく問題が出題されることもあります。現地校で学んだ内容と日本の学習内容にギャップを感じる受験生が多くいます。帰国後の短期間で学習のギャップを埋め、入試対策をする必要があります。
〇学校のレベル・人気が高い
帰国子女を受け入れる中学校は、偏差値が高い傾向にあります。また、帰国子女枠の定員は限られているため、人気のある学校は競争率が高くなるでしょう。
〇合格へ向けた指導が受けづらい
海外在住では、帰国子女枠での中学受験合格に向けた指導を受けにくい場合もあります。
ただし、早めに情報を集め計画的に準備を進めていけば、十分に合格を目指せます。語学力や海外経験を存分にアピールできるよう、対策を進めていくことが重要です。
帰国子女枠の中学受験スケジュール
帰国子女枠の中学受験は、一般入試とスケジュールが異なります。以下は、帰国子女枠の中学受験に向けたスケジュールの一例です。
〇情報収集をスタートする|受験時期の1年前
受験の1年前を目安に、志望校の情報収集・受験対策をスタートしましょう。特に帰国から入試までの期間が短い場合は、早めに対策を始めることが重要です。
〇出願書類の準備をする|受験の半年前
受験の半年前くらいから、志望校の出願準備を始めましょう。海外からの書類取り寄せや、現地校の成績証明書の翻訳などに時間がかかることがあることに注意が必要です。
〇試験を受ける|学校によって異なる
帰国生の中学受験の入試日は一般入試より早く、11月から始まります。中には一般入試と同じ日程で帰国子女枠の入試を行う学校もありますが、この場合は基本的には一般入試と同等の難易度の試験が課される場合が多いでしょう。
学校によって入試日程は異なるため、各学校の募集要項を必ず確認
してください。
出願条件
帰国子女枠の出願条件は学校によって異なりますが、一般的には以下のような条件が求められます。
▼海外滞在期間・帰国時期
一般的な基準として、海外での滞在期間が最低1〜2年以上、また帰国後1〜3年以内が条件です。
▼在籍校から発行される証明書類
在籍校の在籍証明書や成績証明書を求められる場合があるので、出願に間に合うよう計画的に準備しましょう。
▼海外滞在時の出身校の種類
インターナショナルスクールや日本人学校など、在籍していた学校の種類に規定を設ける学校もあります。
▼語学力
一定の語学力を有していることを証明できる資格・スコアなどの提示を要する場合があります。
(例)広尾学園中学校インターナショナルアドバンストグループ:英検®︎2級以上等の英語力を有する者。
参考:帰国生入試 募集要項|中学受験|広尾学園 中学校 高等学校 (hiroogakuen.ed.jp)
出願準備を始める前に、志望校の募集要項で詳細を確認しておきましょう。
受験科目
帰国子女枠の受験科目は学校によって異なりますが、一般的には以下の科目が課されます。
- 国語
- 算数
- 英語
- 面接
- 作文
また、一般入試と同様に4科目(国語・算数・理科・社会)を課す学校や、2科目(国語・算数・理科・社会から2科目選択)を課す学校もあります。
帰国子女枠でも、英語を課さない学校もあります。帰国子女であっても、英語が得意ではない方もいるでしょう。そのため、受験科目に英語が含まれているかどうかは、志望校を選ぶ上で重要なポイントです。
受験科目に英語が含まれていない、あるいは英語の有無を選べる場合もある
ので、必ず確認しておきましょう。
(例)
〇受験科目に英語が含まれていない
芝浦工業大学柏中学校
参考:帰国生入試TOP・帰国生入試サンプル問題 | 入試情報 | 芝浦工業大学附属中学高等学校 (shibaura-it.ac.jp)
〇受験科目で英語の有無を選べる
専修大学松戸中学校
参考:入試情報・募集要項 | 専修大学松戸中学校・高等学校 (senshu-u-matsudo.ed.jp)
帰国子女枠で中学受験をする際の準備・対策のコツ
帰国子女枠の受験に向けて何をすべきか、以下3つの視点から具体的に説明していきます。
- 志望校を早めに決める
- 受験で通用する語学力をつける
- 受験科目の学力を上げる
帰国子女の経験を生かせるよう、受験に向けて戦略的にスキルアップを図りましょう。
志望校を早めに決める
帰国子女枠で受験する場合、早めに志望校を決めるようにしましょう。受験する学校によって必要書類や出願条件、受験科目が大きく異なるためです。
海外在住の場合、出願書類の準備に時間がかかることも
あります。志望校を早めに決め、必要な書類や取り寄せるものがないかを確認しておきましょう。
特に、受験科目については注意が必要
です。先述した英語の有無に加えて、他の科目でも帰国子女への配慮の度合いが学校によって異なります。
例えば、算数の問題が一般枠とは別の簡単な問題で受験できる学校や、帰国子女枠では小学5年生までに習う漢字のみ出題する学校などがあります。
日本の中学受験の対策が不十分と感じている場合は、そのような配慮の厚い学校を受験するのも手です。
また、帰国子女枠の入試問題の過去問題は入手が難しく、Webサイトで公表していなかったり、過去問題集に掲載していなかったりする場合もあります。そのような学校でも、学校説明会に参加することで入手できたり、学校に直接問い合わせるともらえたりする学校もあるので注意してください。
一時帰国する必要がある場合は特に、スケジュールに余裕を持たせる
ことが大切です。
一般入試のスケジュールよりも、少し前倒しで動くつもりで準備を進めていきましょう。
受験で通用する語学力をつける
帰国子女の強みである語学力は、存分にアピールしていきたいポイントです。受験で求められるレベルに達しているかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
学校によっては、英語による面接や英作文が課されることもあるため、「読む・聞く・話す・書く」の4技能
をバランス良く伸ばすことを意識すると良いでしょう。
日頃から英語で発信する機会を作るのも効果的です。子ども自身の考えを的確に伝えられるよう、アウトプットする力を磨いておきましょう。
日本語能力も必要
帰国子女枠というと「英語力」が注目されがちですが、日本の中学校に進学する上では日本語能力も重要です。
海外で長く生活していると、日本語に不安を覚えることがあるでしょう。定期的に日本語の本を読んだり、作文の練習をしたりして、日本語力を維持・向上させる機会を作っておくと安心です。
語彙力や表現力、読解力を養っておくことで、面接や作文にも安心して臨めます。
受験科目の学力を上げる
先で述べたとおり、帰国子女枠では学力試験も課される傾向にあります。各科目の学力を上げることや、出題傾向をもとに対策を立てることが大切です。
▼算数
現地校のカリキュラムと日本の学習内容とのギャップに悩む受験生が多い科目です。苦手な単元を重点的に対策する必要があるでしょう。
▼国語(日本語)
国語(日本語)の対策も疎かにできません。国語の知識や技能が十分でないと、他教科の学習にも影響が出ることもあるからです。
▼英語
ライティングやリーディング、文法など、入試問題に対応できる英語力を養っておきましょう。
志望校の過去問に取り組み、出題傾向を正しく理解した上で、苦手分野を克服していくことが大切です。
また学校によっては、英語のみ飛びぬけている生徒を不安視し、算数などの合格最低ラインを設けている学校もあります。志望校を検討する際に確認しておきましょう。
面接や作文の対策も必要
多くの帰国子女枠の入試では、面接・作文が課されます。学力試験の勉強に並行し、面接と作文の対策を進めましょう。
▼面接対策
面接では、志望動機や留学経験について質問される傾向にあります。具体的なエピソードを交えて、自分の成長や変化を伝えられるよう準備しておきましょう。
▼作文対策
課題文の読解力と、自分の意見を説得力を持って表現する力が求められます。日頃から多くの文章に触れ、思考力・表現力を鍛えておくと良いでしょう。
面接や小論文の対策は、早めに着手し、時間をかけて取り組むことが大切です。独学では不安な場合は、経験豊富な教師にアドバイスをもらうのも効果的でしょう。
自分の考えを伝える練習を積み重ねることが、合格につながります。
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帰国子女枠で受験する中学校を選ぶポイント
帰国子女枠の中学受験の概要や準備・対策の解説を踏まえた上で、最初のアクションとなる「学校選び」を掘り下げていきます。
- 帰国子女の受け入れ実績・フォロー体制があるか
- 進学実績が十分か
- 入試科目・レベルが合っているか
子どもに合った学校を選ぶことは、受験の成功に直結する重要なステップです。学校選びの参考にしてみてください。
帰国子女の受け入れ実績・フォロー体制があるか
帰国子女の受け入れ実績が豊富な学校であれば、帰国子女への理解が深く、手厚いサポートが期待できます。特にチェックしておくと良いポイントを以下にまとめました。
▼教育理念や校風
たとえば「グローバル人材の育成に力を入れている」「多様な価値観を尊重し、国際感覚を養う教育方針である」など、帰国子女に対する理解がある校風かどうかは、一つの判断基準になります。
子どもの性格や適性を考え、適切な教育環境を選ぶことが大切です。
▼受け入れ実績
帰国子女を数多く受け入れてきた実績のある学校であれば、カリキュラムや指導体制、教員の意識など、帰国子女に適した教育環境が整えられている可能性があります。中には、帰国子女のみでクラスを構成する学校もあります。
帰国子女同士だからこそ、悩みを共有したり励まし合ったりでき、心強い存在になり得るでしょう。
▼フォロー体制
帰国直後の生徒へのケアなど、日本の学校生活をサポートする体制が整っているかも重要なポイントです。専任カウンセラーやサポートスタッフがいる学校なら、入学後も安心して生活を送れ、学習もスムーズに進められるでしょう。
担任教員やカウンセラーによる定期面談、取り出し授業(在籍学級以外の教室で指導を行う授業形態)の有無など、帰国子女に寄り添った支援体制があるかをチェックしておくことが大切です。
▼語学・国際教育プログラム
語学教育や国際教育プログラムを行う学校であれば、帰国子女の持つ語学力や異文化経験といった強みをさらに伸ばせるでしょう。帰国子女が異文化交流の中で培ってきたコミュニケーション力を、存分に発揮できる機会になります。
子どもに合った学校選びができれば、帰国子女としての強みを存分に伸ばすことが期待できます。
進学実績が十分か
高校や大学への進学を見据えるなら、進学実績が十分ある学校を選ぶことも重要なポイントです。
帰国子女の特性を踏まえたきめ細やかな進路指導を行っている学校であれば、目標に向けて充実した学習生活が送れるでしょう。
学校の進学実績を知るには、卒業生の進学先や合格率などのデータをチェックすることが大切です。具体的には、以下のようなポイントを押さえてチェックすると良いでしょう。
- 卒業生の進学先の偏差値や難易度
- 国公立大学や有名私立大学への合格実績
- 海外大学への進学実績
- 帰国子女の進学実績
進学実績の高い学校は、受験情報が豊富に蓄積されているのも強みです。豊富な受験情報をもとにした進路指導を受けることで、希望する進路に近づけるでしょう。
大学附属校を選ぶのも◎
志望する大学がある場合、大学附属校の帰国子女枠を狙うのも一つの方法です。
大学附属校の最大のメリットは、内部進学制度を利用できることです。中学校から大学までの一貫教育を受けられるため、受験のストレスを大幅に軽減できるのが大きな魅力といえるでしょう。
時間的・精神的な余裕を確保できる環境を優先する場合は、大学附属校も検討してみてください。
オープンキャンパス・説明会の利用がおすすめ
学校の雰囲気を知るうえでは、オープンキャンパスや説明会への参加がおすすめです。説明会に行くことで多くの情報を得られる他、在校生の様子や施設・設備の充実度を直接見ることができます。
学校の様子を体感することで、受験に対するモチベーションにもつながるでしょう。
また、進路相談など個別の質問にも対応してもらえるため、志望校の特色や入試傾向が具体的につかめます。海外在住で直接参加が難しい場合は、オンラインで説明会に参加する方法も検討してみてください。
学校によっては、学校の公式サイトでは入手できない情報があったり、過去問が入試できなかったりする場合もあるため注意が必要です。
入試科目・レベルが合っているか
志望校の入試科目・レベルが、自分の状況に見合っているかも重要なポイントです。
「英語の有無」「受験科目の種類」など、子どもの強みを発揮しやすい入試方式を選ぶことが、合格につながります。現地校のカリキュラムで培った学力を存分に発揮できる入試なら、受験を優位に進められるでしょう。
一方、苦手科目の配点が高い入試では、合格のハードルも上がってしまうので注意です。
子どもの得意科目によっては、帰国子女枠ではなく、英語力を重視する一般枠での受験の方が合格する可能性が高くなる場合もあります。一般入試での配点で、英語の比重が高い学校も少なくありません。
一般入試の方が有利だと判断される場合は、帰国子女枠以外も視野に入れて受験校を検討
してみましょう。
ただし、一般入試では帰国子女としての経験を直接アピールする機会が限られます。出願書類などでしっかりとアピールする必要があるでしょう。
海外在住経験で得た知見や、異文化環境での成長などを具体的に記載できれば、受験で一歩有利になるといえます。
まとめ
今回の記事では、帰国子女枠での中学受験を検討している帰国子女の方がしておくべき準備や、学校の選び方について解説しました。
重要な3つのポイントを振り返りましょう。
- 帰国子女枠は、海外で一定期間教育を受けた小学生を対象とした入試制度
- 帰国子女枠では、自分の強みを生かせる入試方式を選ぶことが合格への近道
- 帰国子女枠だけでなく、英語力を重視する一般枠での受験も視野に入れる
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