「高校を中退した場合は高卒認定試験を受けたほうがいいのかな」
「高卒認定試験に合格すると高卒資格をもらえるのだろうか」
高卒認定試験に対して、さまざまな事情で高校を卒業できなかった人が受験するイメージを持っているものの、いまひとつ全体像をつかめていない方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、高卒認定試験の基礎情報や高卒認定を取得するメリット、よくある質問
を紹介します。
よく似た言葉として挙げられる「高卒資格」との違いも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
高卒認定試験とは?試験科目や高卒資格との違い
ここでは、高卒認定試験の基礎情報について、次の3つを解説します。
- 高卒認定試験とは
- 高卒認定試験の科目
- 「高卒認定」と「高卒資格」の違い
高卒認定試験とはどのような試験なのか、「高卒資格」や「大検」とは何が違うのか、まずは情報を整理しましょう。
高卒認定試験とは
高卒認定試験の正式名称は「高等学校卒業程度認定試験」です。高卒認定試験に合格すると、高校を卒業した人と同等、もしくはそれ以上の学力があると認められます。
また、合格者には大学・短大・専門学校への入学資格が与えられるほか、就職や資格取得にも活用できます。
令和5年度に実施された高卒認定試験では、受験者16,813人のうち、約47%の7,932人が合格
しました。
高卒認定試験の日程や受験資格、費用は以下のとおりです。
試験日程 | 8月と11月(年2回実施) |
受験資格 | ・受験年度内に満16歳以上になる大学入学資格がない人 ・高校・中等教育学校・高等専門学校・専修学校高等課程などを卒業していない人 |
受験費用 | ・7〜9科目:8,500円 ・4〜6科目:6,500円 ・1〜3科目:4,500円 |
高卒認定試験は満16歳になる年度
から挑戦できます。1回の試験で全科目クリアすることもできますが、合格の効力が生じるのは満18歳の誕生日からである点に注意しましょう。
また、高卒認定試験に合格するためには、最大9科目の試験を受けなければなりません。
ただし、試験は年2回実施されているため、受験科目を二分して対策できます。年度内に合格できなかった場合、次年度に再び受験が可能です。
大検との違い
高卒認定試験と混同しがちな言葉が「大検」です。大検とは、正式名称を「大学入学資格検定制度」といい、高卒認定試験の過去の名称を指します。
平成16年度までは「大検」と呼ばれていましたが、平成17年度から「高卒認定試験」に名称変更されました。文部科学省のWebサイトにも「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」と記載されています。
試験の実施方法や合格ライン、難易度については基本的に変わりません。試験はマークシート方式で、難易度も中学1年生〜高校1年生の勉強内容が理解できていれば合格できるものです。
各科目の合格ラインも100点満点中の40〜50点程度
といわれています。
高卒認定試験の科目
高卒認定試験では、最大9科目受験し、合格する必要があります。令和6年度に実施予定の試験科目と合格要件は以下のとおりです。
教科 | 試験科目 | 合格要件 |
国語 | 国語 | 必修 |
地理歴史 | 地理 歴史 | 必修 必修 |
公民 | 公共 | 必修 |
数学 | 数学 | 必修 |
理科 | 科学と人間生活 物理基礎 化学基礎 生物基礎 | 以下のいずれかが必修 ・「科学と人間生活」及び「基礎」のうち1科目(合計2科目) ・「基礎」のうち3科目 |
英語 | 英語 | 必修 |
参照:(お知らせ)試験科目、合格要件、免除科目、出題範囲の変更等について丨文部科学省
令和5年度の第2回試験までは「地理歴史」と「公民」にも選択科目がありました。しかし、令和6年度の試験からは選択不要となっています。
また、高卒認定試験で合格した科目には有効期限がありません。そのため、合格科目については次回以降の試験が免除されます。
高校で取得した単位があれば科目免除を受けられる
高卒認定試験に合格するためには、必修・選択合わせて8〜9科目の試験に通過しなければなりません。ただし、高校で取得している単位があれば、該当科目の受験を免除
される場合があります。
たとえば、令和4年4月以降に高校に入学した方で「地理総合」の科目を2単位取得している場合は、高卒認定試験で「地理」の受験を免除されます。
高卒認定試験の科目免除を受ける際は「単位修得証明書」の提出が必要です。単位修得証明書は在籍高校で発行してもらえますが、保存期間が過ぎた場合は入手できない可能性もあるため注意しましょう。
また、高卒認定試験ですべての科目を免除しても、合格者とは認められません。高卒認定を取得するためには、最低1科目以上を受験して合格する
必要があります。
「高卒認定」と「高卒資格」の違い
「高卒認定」と「高卒資格」には下記のような違いがあります。
高卒認定 | 高卒資格 | |
正式名称 | 高等学校卒業程度認定試験 | 高等学校卒業資格 |
資格内容 | 高校を卒業した人と同等以上の学力があることを認定するもの | 高校を卒業した事実を証明するもの |
取得条件 | 合計8〜9科目の試験に合格 | ・3年以上の在籍期間 ・74単位以上の取得 ・30単位時間以上の特別活動に出席 (通信制高校のみ) |
最終学歴 | 中卒 | 高卒 |
高卒資格は、全日制・定時制・通信制などの高校を卒業した事実を証明する資格です。
一方の高卒認定はあくまでも「高卒程度の学力」を認めるものであって、高校を卒業した事実を示すものではありません。
そのため、高卒認定を取得しても最終学歴は「中卒」のまま
であり、就職活動などで不利になる可能性があります。
ただし、高卒認定は合計8〜9科目の試験をクリアするだけでよいため、取得条件が複数ある高卒資格に比べると難易度は低めです。
トライ式高等学院では「高卒認定」と「高卒資格」のどちらも目指せる
参照:通信制高校で大学進学丨通信制高校・サポート校のトライ式高等学院
トライ式高等学院では、一人ひとりの要望に合わせて「高卒認定」と「高卒資格」のどちらも目指せるよう、サポートを行っています。
トライ式高等学院とは、通信制高校を3年で卒業できるように、さまざまな側面から生徒をサポートする通信制高校サポート校です。
通信制高校に通う生徒の中には「高卒資格」の取得を目指していても、さまざまな事情から「高卒認定」を目指す道に変更する方がいます。
トライ式高等学院では「高卒認定」「高卒資格」どちらにも対応可能なため、状況に応じて教師と一緒に選んだり変更したりしながら学習を進められます。
生徒に合わせた独自のカリキュラムやマンツーマン指導
によって、希望の進路を実現可能です。
高卒認定を取得する4つのメリット
高卒認定の取得には、以下4つのメリットがあります。
- 高校に通わなくても取得を目指せる
- 大学・短大・専門学校の受験資格を得られる
- 高卒資格と同様の待遇を受けられる場合がある
- 単位制の高校で単位が加算される
高卒認定を取得しても最終学歴は「中卒」のままですが、将来の可能性を広げるうえでは十分な効果を期待できます。
現在の状況や希望する進路も踏まえつつ、受験するかどうかを判断しましょう。
1.高校に通わなくても取得を目指せる
高卒認定は試験に合格さえすれば取得できます。高校に通わなくても高卒程度の学力を証明できる点は、大きなメリットです。
高校に通う必要がないことから、以下のような人にとって高卒認定の取得は良い選択肢となるでしょう。
- 過去に高校を中退して現在仕事をしている
- スポーツ・芸能など将来に向けた活動をしている
- 不登校などの事情で登校が難しい人
通学が不要という点では、通信制高校も同じように感じられるかもしれません。しかし、通信制高校を卒業するためには日々のレポート提出や、定期的な登校
が必要となります。
高卒認定試験を受けるためには対策が必要ですが、通信制高校に比べると学習量は少なめです。また、レポートもなく、自分のペースで学習を進められるため、勉強にかかる負担を軽減できます。
2.大学・短大・専門学校の受験資格を得られる
高卒認定は、あくまでも高校の卒業者と同程度の学力があることを認める資格であるため、学歴が高卒になるわけではありません。
しかし、高卒認定の取得によって大学・短大・専門学校の受験資格を得られます。
高校を中退した人や中学卒業後に就職した人が「大学に行きたい」と思っても、高校に編入や再入学をして勉強し、卒業して受験資格を得るのはハードルが高い場合もあるでしょう。その点、高卒認定は試験に合格するだけで受験資格を得られます。
なお、高卒認定を取得しても最終学歴は「中卒」のままですが、大学などに進学し卒業すれば「大卒」「短大卒」「専門学校卒」
になります。最終学歴が変わることで、就職先の幅も広がるでしょう。
一部の国家資格や公務員試験の受験資格も得られる
高卒認定を取得すると、一部の国家資格や公務員試験の受験資格も得られます。
高卒認定の合格者が受験できる国家資格・公務員試験は以下のとおりです。
国家資格 | ・幼稚園教員資格認定試験 ・高等学校教員資格認定試験(情報) ・第一種衛生管理者免許試験 ・職業訓練指導員試験 ・普及指導員資格試験 ・1級建築施工管理技術検定試験 など |
公務員試験 | ・国家公務員採用一般職試験(高卒者試験) ・税務職員採用試験 ・海上保安大学校学生採用試験 ・気象大学校学生採用試験 ・防衛大学校学生採用試験 ・衆議院事務局職員採用衛視試験 など |
参照:高等学校卒業程度認定試験の合格を高等学校卒業と同等とみなしている採用試験、国家資格一覧丨文部科学省
高卒認定を取得すると、上記を含め28種類の国家資格、15種類の公務員試験を受験できるようになります。
ただし、中には現場での実務経験が求められる
場合もあるため、前もって各省庁や自治体に確認しておきましょう。
3.高卒資格と同様の待遇を受けられる場合がある
就職活動の際、高卒認定を取得していれば高卒資格者と同等の待遇を受けられる場合があります。
文部科学省の調査によると、「高卒と同等である」「学歴で差はつけていない」とする企業は43.6%、自治体は69.5%であることがわかりました。
採用試験における高卒認定合格者の扱い | 企業 | 自治体 |
高卒と同等である | 25.9% | 44.9% |
高卒として認めていない | 1.3% | 2.7% |
学歴で差はつけていない | 17.7% | 24.6% |
高卒認定試験の合格者が受けに来たことがなく決めていない | 44.9% | 22.1% |
わからない | 2.6% | 2.8% |
参照:高等学校卒業程度認定試験合格者の企業等における扱いに関する調査の結果について丨文部科学省
一方で、高卒認定の合格者を「高卒として認めていない」とする地方自治体や企業は少数派です。つまり、半数近くの企業や自治体で高卒資格者と同様の待遇を受けられる
といえます。
4.単位制の高校で単位が加算される
単位制の高校に通学している場合、高卒認定を取得していたり、試験に合格した科目があったりすると、その分の単位が加算されて授業の履修を免除されます。
単位制の高校を卒業するためには、74単位以上を取得しなければなりません。
そこで、卒業までの負担を軽くするために有効活用できるのが、高卒認定試験です。試験に合格した科目の履修が免除されるため、卒業までに必要な授業数を減らせます。
たとえば「NHK学園高等学校」では、高卒認定試験で合格した科目について、単位としてある程度認めることをWebサイトに明記しています。
高卒認定試験で合格した科目を高校の単位に加算できれば、高校卒業を比較的スムーズに目指せる
でしょう。
ただし、単位の加算を認めていなかったり、条件を設けたりしている高校もあるため、事前に相談してみてください。
高卒認定試験に関するよくある質問
ここからは、高卒認定試験に関するよくある質問を紹介します。
Q.高卒認定試験は難しい?合格率は?
Q.高卒認定試験の受け方は?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
Q.高卒認定試験は難しい?合格率は?
高卒認定試験では、主に基礎学力が問われます。そのため、各科目の出題範囲は以下のように、中学1年生〜高校1年生で学習する内容が中心となります。
試験科目 | 出題範囲(対応する教科書) |
国語 | 「現代の国語」「言語文化」 |
地理 | 「地理総合」 |
歴史 | 「歴史総合」 |
公共 | 「公共」 |
数学 | 「数学Ⅰ」 |
科学と人間生活 | 「科学と人間生活」 |
物理基礎 | 「物理基礎」 |
化学基礎 | 「化学基礎」 |
生物基礎 | 「生物基礎」 |
地学基礎 | 「地学基礎」 |
英語 | 「英語コミュニケーションⅠ」 |
参照:試験科目・合格要件・出題範囲(R6.4~)丨文部科学省
試験自体の難易度はそれほど高くありませんが、合格率が40〜50%程度であることを考えると、十分な対策が必要でしょう。
独学で対策する場合は、市販の教科書や参考書で学習を進めるのが一般的です。ただし、高卒認定試験は科目数が多いため、すべての教科をバランスよく勉強する
必要があります。
また、高卒認定の一般的な合格ラインは、1科目あたり100点満点中40〜50点です。得意科目だけでなく、苦手科目でもしっかり得点できるように対策しましょう。
トライ式高等学院ではオーダーメイドの学習プランで「高卒認定」を目指せる
参照:高卒認定からの大学進学コース|通信制高校ならトライ式高等学院
トライ式高等学院の「高卒認定コース」では、一人ひとりの学力に合わせたオーダーメイドの学習プランで、高卒認定の取得をサポートしています。
トライ式高等学院は毎年多くの合格者を輩出しており、目標や夢を実現させた方も多数います。
「高卒認定を取りたい」と思う背景は、以下のとおり、人によってさまざまです。
- 高校を中退した過去がある
- 高校を休学しているが大学には進学したい
- 国家資格を取得するために高卒認定が必要
トライ式高等学院では、各生徒の状況に合わせて、高卒認定の取得だけでなく大学合格に向けたカリキュラムも提案可能
です。
合格・指導実績の豊富なプロ講師がマンツーマンでお子さまの学習を丁寧にサポートします。
Q.高卒認定試験の受け方は?
高卒認定試験を受験するまでの流れと、それぞれの注意事項は以下のとおりです。
高卒認定試験を受験する流れ | 注意事項 |
①願書を手に入れる | 受付期間を確認し請求する |
②願書に必要事項を記入する | 提出が必要な書類を確認する |
③願書を送付する | 「簡易書留」で郵送する |
④受験票を受け取る | 受験票の記載に誤りがないか確認する |
⑤試験を受ける | 鉛筆や消しゴムは複数持っていく |
⑥試験の結果が届く | 紛失しないように保管する |
科目免除を受ける場合は、願書の送付時に「単位修得証明書」を添付します。証明書は厳封で提出しなければならないため、高校から届いても開封せず、そのまま願書と一緒に送りましょう。
また、願書は必ず「簡易書留」で送付するよう文部科学省が指定しています。願書を送ってから受験票が届くまでに大抵の場合は1ヶ月半以上かかる
ため、自宅に届く時期を事前に把握しておくと安心です。
まとめ
今回の記事では、高卒認定試験の基礎情報や、高卒認定を取得するメリットを解説しました。
最終学歴は「中卒」のままに変わりないものの、高卒認定の取得には以下4つのメリットがあります。
- 高校に通わなくても取得を目指せる
- 大学・短大・専門学校の受験資格を得られる
- 高卒資格と同様の待遇を受けられる場合がある
- 単位制の高校で単位が加算される
進路を考える際、学歴が気になる方は多いでしょう。しかし学歴にとらわれず、目標達成への最短ルートとして高卒認定試験を活用することも一つの手段です。
ぜひ本記事を参考に、将来の可能性を広げるための選択肢
として、高卒認定試験を検討してみてください。