2025/04/11

国公立大学の総合型選抜は共通テストなしで受けられる?共通テストありの私立大学の事例も紹介

総合型選抜は、学力試験だけでなく、個別の適性や意欲を重視した選考が行われる入試方式です。しかし、近年の入試改革により、一部の大学では共通テストの成績を合否判定に活用するケースが増えています。本記事では、総合型選抜における共通テストの位置づけを解説し、国公立・私立大学の具体的な事例を紹介します。共通テストの有無が志望校選びにどのように影響するのかメリット・デメリットを検討し、自分に合った受験戦略を立てる参考にしてください。

総合型選抜における学力評価と共通テスト

総合型選抜は、アドミッションポリシーと志願者の適性を総合的に判断し、慎重に選考を行うことを目的とした入試方式です。大学や学部ごとに出願要件や選考プロセスが異なる点が特徴であり、従来は主に書類審査・面接・小論文などによって評価されていました。

しかし、文部科学省の大学入試改革の方針により、総合型選抜においても学力評価が求められるようになり、各大学は以下のいずれかを必ず活用することとされています。

  • 大学が実施する評価手法(例:資格・検定試験の成績、各科目に関する試験、実技試験、小論文、プレゼンテーション、口頭試問など)
  • 大学入学共通テスト

この方針を受け、私立大学の総合型選抜でも、出願条件として共通テストの受験を求めたり、独自試験実施後にスコア提出を必須としたりする大学なども現れています。

近年、共通テストを選考に採用するケースが増えているものの、依然として多くの私立大学の総合型選抜では共通テストを求めておらず、また、一部の国公立大学でも「共通テストなしの総合型選抜」を採用しているケースは少なくありません。

こうした状況を理解し、共通テストの有無を踏まえた併願対策を賢く立てることも、受験生にとって重要なポイントとなります。

総合型選抜における共通テストとの関係性

国立大学の場合

国立大学の総合型選抜には特徴的な仕組みがあり、同じ大学や学部内でも「共通テストを課さない総合型選抜」と「共通テストを必須とする総合型選抜」の二種類の方式を実施している大学が少なくありません。つまり、共通テストなしで受験できるケースが複数あるということです。

東北大学、神戸大学、広島大学などの有名国立大学でも、このような選抜方式が採用されており、共通テストを受けずに入学できる可能性が開かれています。

そのため、「国立大学への入学を目指しているが、共通テストには不安がある」という受験生にとっては、共通テストを課さない総合型選抜を選択することで、国立大学への道を探ることが可能です。

一方で、京都大学、大阪大学、九州大学のように、一般的な難関国立大学では、ほぼすべての学部で共通テストの受験が必須とされているケースが多い傾向です。

これらの大学では、学部ごとの基準は異なるものの、共通テストで高得点を取ることが求められる傾向があり、学力試験に自信がない場合、出願のハードルは高くなります。

難関国立大学では、特別な才能や熱意を持っていたとしても、一定の学力を備えていなければ受験資格を得ることが難しいという点が特徴です。

公立大学の場合

公立大学の総合型選抜入試の多くは、共通テストを受験しなくても出願できる仕組みを採用しています。

共通テストが必須となるのは、比較的規模の大きい公立大学や、医学部の総合型選抜が中心で、それ以外の地方公立大学では共通テストなしで受験できるケースが大半を占めています。

ただし、公立大学全体で総合型選抜を実施している大学の割合を考慮した場合、採用している大学自体がそれほど多くない状況であるため、絶対数自体は多いとは言えません。

今後、総合型選抜に力を入れる公立大学が増えていけば、こうした状況にも変化が生じる可能性があります。

私立大学の場合

私立大学では、共通テストを必要としない総合型選抜が大半を占めています。私立大学の総合型選抜は、大学ごとの方針に沿った学生を柔軟に選抜することを目的としている場合が多く、学力だけでなく、熱意や実績、人間性を重視する傾向があります。

さらに、少子化による学生確保の観点から、できるだけ早期に合格を出す意図も考えられ、今後も私立大学の総合型選抜で共通テストを必要とするケースは限定的なまま推移する可能性があります。

ただし、一部の大学や学部では共通テストが必須となっている場合もあるため、志望する大学・学部の募集要項は必ず確認するようにしましょう。

総合型選抜で共通テストが求められる主なパターン

共通テストが求められる総合型選抜には、いくつかのパターンがあります。まず、出願時に共通テストのスコアを基準として設定しているケースがあります。

特に国公立大学に多く見られ、一定の得点を満たしていないと出願できません。この方式を採用している大学を志望する場合、共通テストの結果が直接出願資格に関わるため、事前に大学の基準を確認し、目標となる得点を設定した上で受験計画を立てることが重要です。

また、総合型選抜での選考を通過した後、共通テストのスコア提出が条件となる大学もあります。例えば、ある国公立大学では、総合型選抜の第二次選抜において、共通テストの得点が一定の基準(例:75%以上など)を満たすことが合格の条件とされています。このような方式では、基準を下回ると基本的に選考の通過が取り消しとなるため、注意が必要です。

例外として、共通テストの難易度が例年よりもかなり高く、例年の基準点では合格者が少なくなりすぎる場合に基準を緩和することもあります。しかしその場合でも、定員通りに合格者を出すかどうかや基準をどこまで緩和するのかは明確ではないので、共通テストが難しい年度や科目にあたったとしても、大学発表の基準点を突破できるように入念な準備をしておくことが重要であると言えます。

さらに、共通テストのスコアが、奨学金や特待生選抜の条件になることもあります。特待生枠を希望する場合、共通テストの受験が必須であったり、合格者の中から成績上位者に対して特待生奨学金が給付されたりといった制度があります。

このように、共通テストの活用方法は大学ごとに異なるため、志望校の募集要項を確認し、自分の受験戦略に合った方式を選ぶことが重要です。

総合型選抜で共通テストを課さない国公立大学の事例

ここでは、総合型選抜入試で共通テストを課さない国公立大学の事例を紹介します。

これらのリスト以外にも共通テストなしで受けられるケースは存在しますので、気になる大学の学部・学科の入試要項を確認してみてください。

■北海道大学 フロンティア入試 TypeⅡ

対象学部 理学部
 数学科
 物理学科
 化学科
 生物科学科(高分子機能学専修分野)
工学部
 応用理工系学科(応用物理工学コース)
 機械知能工学科
 環境社会工学科(環境工学コース)

■札幌市立大学

対象学部 デザイン学部
 デザイン学科

■公立はこだて未来大学

対象学部 システム情報科学部

■東北大学 AO入試(総合型選抜)Ⅱ期

対象学部 文学部
教育学部
法学部
理学部
医学部
歯学部
工学部
農学部

■山形大学 総合型選抜Ⅰ&Ⅱ

対象学部 【総合型選抜Ⅰ】
 人文社会科学部
 地域教育文化学部
 理学部
 工学部 フレックスコース

【総合型選抜Ⅱ】
 工学部 昼間コース
 農学部

■岩手大学 総合型選抜Ⅰ 地域創成特別プログラム ものづくり系/防災・まちづくり系

対象学部 理工学部
システム創成工学科

■埼玉大学 特別選抜

対象学部 理学部 生体制御学科
工学部 情報工学科
教養学部 基礎科学科

■筑波大学

対象学部 人文・文化学群 人文学類
人文・文化学群 比較文化学類
人文・文化学群 日本語・日本文化学類
生命環境学群 生物学類
情報学群 情報科学類
情報学群 情報メディア創成学類
情報学群 知識情報・図書館学類
体育専門学群

■信州大学 総合型選抜Ⅰ

対象学部 教育学部
 現代教育コース
 国語教育コース
 ものづくり・技術教育コース
 特別支援教育コース
工学部
 全学科

■金沢大学 総合型選抜Ⅰ

対象学部 人間社会学域
 国際学類

■静岡大学 総合型選抜

対象学部 人文社会科学部
 経済学科
情報学部
 情報科学科
工学部
 機械工学科
 電気電子工学科
 電子物質科学科
 化学バイオ工学科
 数理システム工学科
農学部
 生物資源科学科
グローバル共生科学部
 グローバル共生科学科

■長野大学 総合型選抜

対象学部 社会福祉学部
環境ツーリズム学部
企業情報学部
※社会福祉学部は共通テスト受験を推奨

■名古屋大学 大学入学共通テストを課さない総合型選抜

対象学部 理学部
 化学科
 生命理学科

■愛知県立芸術大学 総合型選抜

対象学部 美術学部
 日本画専攻
 彫刻専攻
 デザイン専攻
 陶磁専攻
 メディア映像専攻

■名古屋工業大学 総合型選抜 高度工学教育課程

対象学部 工学部
 社会工学科 建築・デザイン分野
 社会工学科 環境都市分野

■愛知教育大学 総合型選抜

対象学部 教育学部
 幼児教育専攻
 義務教育専攻
  学校教育科学専修
  生活・総合専修
  ICT活用視点専修
  日本語支援専修
  日本語専修
  社会専修
  算数・数学専修
  理科専修
  音楽専修
  図画工作・美術専修
  保健体育専修
  ものづくり・技術専修
  家庭専修
  英語専修
 特別支援教育専攻
 養護教育専攻

■大阪公立大学 総合型選抜

対象学部 現代システム科学域 教育福祉学類
工学部 海洋システム工学科

■奈良女子大学 総合型選抜 探究力入試「Q」

対象学部 文学部
 ことばと人間の探求
 社会と人間の探求
 地域と環境の探求
 ならの探求
理学部
 数物科学科
 化学生物環境学科 化学コース
 化学生物環境学科 生物科学コース
 化学生物環境学科 環境科学コース
生活環境学部
 食物栄養学科
 心身健康学科
 住環境学科
 文化情報学科 生活文化学コース
 文化情報学科 生活情報通信科学コース
工学部
 工学科

■滋賀大学

対象学部 教育学部
経済学部【資格・検定型】
データサイエンス学部 総合型選抜Ⅰオンライン講座受講型

■神戸大学 「志」特別選抜

対象学部 文学部
国際人間科学部
法学部
医学部
工学部
農学部
海洋政策科学部

■神戸市外国語大学

対象学部 外国語学部
 英米学科
 ロシア学科
 中国学科
 イスパニア学科
 国際関係学科

■岡山県立大学

対象学部 保健福祉学部 現代福祉学科
デザイン学部
 ビジュアルデザイン学科
 工芸工業デザイン学科
 建築学科

■周南公立大学

対象学部 経済経営学部
人間健康科学部
 スポーツ健康科学科
 福祉学科

■香川大学 総合型選抜Ⅰ

対象学部 教育学部
 学校教育教員養成課程
医学部
 看護学科(※ナーシング・プロフェッショナル育成入試)
創造工学部
 造形・メディアデザインコース
 建築・都市環境コース
 防災・危機管理コース
 情報コース
 人工知能・通信ネットワークコース
 機械システムコース
 材料物質科学コース
農学部
 応用生物化学科

■広島市立大学

対象学部 芸術学部
 美術学科 日本画専攻
 美術学科 油絵専攻
 美術学科 彫刻専攻
 デザイン工芸学科
国際学部
 国際学科
情報科学部
 情報工学科
 知能工学科
 システム工学科
 医用情報科学科

■広島大学 光り輝き入試Ⅰ型

対象学部 総合科学部
文学部
法学部
理学部
医学部
歯学部
薬学部
工学部
生物生産学部
情報科学部

■鳥取大学 総合型選抜Ⅰ

対象学部 地域学部
 地域学科地域創造コース
 地域学科人間形成コース
 地域学科国際地域文化コース
農学部
 生命環境農学科

■九州大学 総合型選抜Ⅱ

対象学部 文学部
法学部
経済学部
 経済・経営学科
理学部
 物理学科
 化学科
 地球惑星科学科
 数学科
 生物学科
医学部
 保健学科
  看護学専攻
  放射線技術科学専攻
  検査技術科学専攻
歯学部
工学部
 電気情報工学科
 材料工学科
 応用化学科
 化学工学科
 融合基礎工学科
 機械工学科
 量子物理工学科
 船舶海洋工学科
 地球資源システム工学科
 土木工学科
 建築学科
芸術工学部
 芸術工学科
農学部

■九州工業大学

対象学部 工学部
情報工学部

■長崎大学 総合型選抜Ⅰ

対象学部 多文化社会学部
 多文化社会学科
経済学部
 総合経済学科
工学部
 工学科
水産学部
 水産学科

■熊本大学 グローバルリーダーコース

対象学部 文学部
法学部
理学部
工学部

■宮崎大学

対象学部 教育学部
 小中一貫教育コース
 小学校主免専攻(宮崎県教員希望枠)
 中学校主免専攻(音楽・美術・保健体育)
工学部
 工学科(全プログラム)

■鹿児島大学 総合型選抜(AO型選抜)

対象学部 水産学部
 水産学科

総合型選抜で共通テストを課す私立大学の事例

ここでは、総合型選抜において共通テストを課す私立大学の事例を紹介します。これらの入試方式では、書類審査や面接などの総合型選抜特有の選考とともに、共通テストの成績が合否に影響を与えます。以下の事例以外にも同様のケースがありますので、事前に詳細を確認することが重要です。

早稲田大学 地域探求・貢献入試(旧:新思考入学試験)

対象学部 法学部
文化構想学部
文学部
商学部
人間科学部
スポーツ科学部

早稲田大学 地域探求・貢献入試は、共通テストが課される総合型選抜入試です。1次選考、2次選考を通過した合格者は、共通テストの受験が必須となります。共通テストを受験しなかった場合や学部指定の教科・科目の成績が提供されなかった場合は、合否判定の対象外となります。志望学部ごとに指定された教科・科目が異なるため、事前に募集要項を確認することが重要です。

東海大学 総合型選抜 医学部 医学科 希望の星育成

対象学部 医学部医学科

東海大学の希望の星育成入試は、医学部医学科の志願者を対象にしています。調査書、志望理由書、活動報告書を軸に、小論文、オブザベーション評価、面接試験と共通テストの結果が総合的に判断され、最終的な合否が選考される形式です。共通テストは外国語、数学、理科の各科目で構成され、指定された教科・科目を受験していない場合は、合否判定の対象となりません。

中京大学 共通テスト利用方式

対象学部 国際学部
心理学部
経営学部
現代社会学部
工学部
スポーツ科学部
総合政策学部

中京大学の共通テスト利用方式では、共通テスト受験後(自己採点後)に出願が可能です。出願書類、事前体験型講義時に提出した講義レポート、共通テストの成績にて総合判定がなされます。単位認定型など他の出願方式と併願することが可能です。

総合型選抜における共通テスト まとめ

総合型選抜における共通テストの活用は、大学や学部ごとに異なります。国公立大学では、共通テストを課すケースと課さないケースがあり、私立大学では共通テストを必要としない方式が主流でありながら、一部の大学では共通テストの成績が合否に影響を与える仕組みを導入しています。

受験生にとって重要なのは、志望大学の入試要項をしっかりと確認し、自身の学力や適性に合った受験戦略を立てることです。特に、共通テストを課すかどうかが進路選択に影響を与えるため、早い段階から情報収集を行い、適切な準備を進めることが求められます。
共通テストは、幅広い科目に対応する必要があります。一般的には、推薦専門塾では共通テスト対策が実施できない場合もあるため、必要な点数を取るための学習については、塾や予備校を適切に活用し、得点アップを目指していきましょう。必要に応じて、共通テスト対策も可能で、かつ総合型選抜の専門コースがある塾を選ぶのも良いでしょう。

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