総合型選抜への挑戦を考えている多くの方が、「資格を取得したいが本当に役立つのか」、また「具体的にどの資格を取得すればいいのか」、といった悩みを抱えています。
そこで本記事では、総合型選抜における資格の影響、あると有利になる資格、総合型選抜に受かるコツについて解説していきます。
資格があると総合型選抜で有利になる理由
総合型選抜では、一般的に、資格を持っていることが有利に働きます。特に比較的難易度の高い資格を保有している方は、「継続的な努力ができる」、「一定以上の学力がある」といった判断をされます。(司法試験や公認会計士試験等、資格があるだけで仕事をしていける最難関の資格を有している場合、それでもなぜ大学で勉強したいかを的確に説明する必要性が生じますが、今回の記事はそういった特殊なケースを除きます)
総合型選抜の合格率は、国立大学で30%前後、私立大学で20%前後です。3〜5人に1人しか合格できないのが現実で、不合格になる方が明らかに多いです。だからこそ合格を果たすために、いかにしてライバルよりも前に出るかを考える必要があります。資格は付加価値になるため、保有していることによりスタートラインで差をつけることができます。
自分の保有資格から出願する大学を選ぶ
総合型選抜に合格するポイントはマッチングです。大学側が求める人物像と、出願者のスペックが一致すると合格する確率が高くなります。総合型選抜を導入する大学は、大学の公式ホームページで総合型選抜に関する詳細を公開していることが多いため、事前にチェックしておきましょう。
自身の保有資格をもとに出願する大学を絞っていけば、自ずと合格しやすくなります。例えば、自身が英語資格を保有しているならば、英語資格を出願要件とする大学が狙い目です。
英語資格があれば可能性が広がる
語学・言語資格の中でも、英語資格を保有していると特に総合型選抜で有利になります。英語は世界共通語と呼ばれており、活用しやすい言語です。
日本にある語学教室には、英会話教室が圧倒的に多いですよね。フランス語やドイツ語、中国語などの資格も役立ちますが、それ以上に英語資格の方が重視されます。
英語資格を取得するには、読み書きだけでなく、聴いて話す能力も必要です。英語資格を保有している方は、これらの能力がまんべんなく揃っていると判断されるため、総合型選抜で有利に働きます。
総合型選抜に受かるために役立つ代表的な英語資格は次の4つです。
- 英検®︎
- IELTS
- TOEFL
- TOEIC
以下で詳しく説明します。
英検®︎
英検®︎とは実用英語技能検定のことです。文部科学省後援の英語資格で、1級・準1級・2級・準2級プラス・準2級・3級・4級・5級の8つの級があります。実社会で役立つ英語を想定して出題されるため、実践的な英語力をつけることができます。英検®︎は自分の英語力に合わせて、好きな級から始められるのがメリットです。
英検®︎の志願者数が最も多いのは中学生・高校生です。将来的に総合型選抜に挑戦したいと考えている方は、中学生・高校生の時期に取得しておくのが好ましいでしょう。ただし、入試成績として活用する場合は、「直近2年間」など受験時期が定められている場合もあります。
英検®︎は年に3回実施されますが、CBT形式を使うことで受験回数を増やすことが可能です。
IELTS
IELTSは世界中で実施される英語熟練度を測定するための英語資格です。海外留学における英語力証明に役立つ資格で、英語圏への移住を希望する方も多く取得しています。
IELTSは入学審査の一環としても導入され、アイビー・リーグを筆頭に3,400超の教育機関が導入しています。日本の場合は総合型選抜の合格に役立ちます。
IELTSにはペーパー版とコンピューター版の2種類があります。
- ペーパー版(開催日程:月に4回程度)
- コンピューター版(開催日程:ほぼ毎日)
TOEFL
TOEFLは、アメリカ合衆国の教育試験サービスが主催する英語資格です。4技能(読む・聞く・話す・書く)を総合的にテストし、実際に「英語を使えるかどうか」を判断します。
TOEFLの受験場所であるテストセンターは、全国に50ヶ所以上が設置されています。予約は5ヶ月先まで入れられるので、長期的な目標を設定した上で、英語学習に取り組むことができるでしょう。
- 2025年度の会場受験回数(122回)
- 開催曜日(土日)
TOEIC
TOEICは、国際コミュニケーション英語能力テストのことです。テストには合格・不合格はなく、現時点の英語力がスコアで示されます。TOEICは英語でのコミュニケーション能力を測定する手段として、英語を母国語としない方を受験対象にしています。
TOEICには「聞く・読むスキルを測定するテスト」と「話す・書くスキルを測定するテスト」の2つがあり、両方を受けることで総合的な英語力の判断が可能です。
- 試験回数(年に6回)
- 開催曜日(日曜日)
英語資格以外で役立つ資格
語学・言語資格があると、総合型選抜で有利になります。最もポピュラーな資格は英語系ですが、大学・学部によっては英語系以外でも判断基準の1つになります。
例えば、上智大学文学部ドイツ語学科を受験するならば、ドイツ語技能検定試験に合格した方が有利です。また、国際貢献等に興味がある人は、通常の学部であっても有利に働きます。将来、自分がどのような学部・学科・専攻で学びたいのか明確にし、それに備えて必要な資格を取得しておくといいでしょう。
英語資格以外で役立つ代表的な資格は次の5つです。
- ドイツ語技能検定試験
- 実用フランス語技能検定試験
- 日本漢字能力検定
- 実用数学技能検定
- 統計検定
以下で詳しく説明します。
ドイツ語技能検定試験
ドイツ語技能検定試験は財団法人ドイツ語学文学振興会が実施する試験です。1992年から開始され、今まで40万人ほどが出願しています。日本のみで実施しており、語彙数に応じて1級〜5級までの等級が設定されています。
ドイツ語はEUで最も活用されている言語です。そのため独検はヨーロッパ留学を希望する方におすすめの資格です。受験者の60%ほどは大学生ですが、小学生から受験ができます。総合型選抜対策として独検を活用するなら、高校生のうちに取得しておくのがおすすめです。
- 開催回数(夏1回・冬1回)
- 受験資格(制限なし)
実用フランス語技能検定試験
実用フランス語技能検定試験は公益財団法人フランス語教育振興協会が実施する語学検定です。文部科学省後援の民間資格で、誕生から40年を超える歴史があります。フランス語はフランスのみで使用されていると思われがちですが、実は29の国家の公用語です。
仏検の級は1〜5級に分けられ、最低級の5級でも大学1年前期修了程度の言語力に相当します。フランス語学科を受験する方は、ぜひとも取得しておきたい資格です。
- 開催回数(春季1回・秋季1回)
日本漢字能力検定
日本漢字能力検定は日本漢字能力検定協会が実施する検定です。1975年から開始され、2025年で50周年を迎えます。漢検は高等学校や専修学校、大学・短大などで活用事例が多いです。漢検の公式ホームページでは、学校名・条件検索により漢検の活用校を確認できます。
漢検を保有していれば、よほどの低い級でなければ不利に働くことはなく、有利に働きます。漢検を評価する大学・短大は増え続けており、6割以上の大学が評価において有利になります。
- 開催回数(6月・10月・2月の3回)
- 実施曜日(日曜日)
実用数学技能検定
実用数学技能検定は日本数学検定協会が実施する検定です。数学力を示す指標であり、合格すると入試や就職で有利に働くでしょう。
数学検定は1〜5級まであり、1級で大学レベルの数学力があると判断されます。準1級で高校3年程度であるため、かなりハードルは高いですが、この時期に1級に合格しておけば総合型選抜において有利になります。
- 開催回数(年3回)
統計検定
統計検定は一般財団法人「統計質保証推進協会」が実施する統計力を測るための試験です。データの分析・活用をする上で重宝する資格で、統計学を学びたい方が基礎知識とスキルを身につけるために取得する傾向があります。特にデータサイエンス系の学部を受験する際に有利に作用します。
統計検定は1級から4級まであり、1級の検定は11月に実施されています。1級以外はCBT方式試験申込サイトから試験会場を検索して、試験カレンダーを確認する、または試験会場に連絡して試験日を調べてください。
資格以外でチェックされるポイントは
資格は努力の証明であり、一般に保有資格が多ければ多いほど総合型選抜で有利になります。ただし資格のほかに独自の選択基準を設けている大学があるため、資格だけで合否が決まるわけではありません。
資格以外で重要になる指標には、アドミッションポリシーがあります。つまり「大学側が考える受け入れしたい学生像」のことで、校風を知るための一助にもなります。
アドミッションポリシーは大学全体に加えて、学部・学科別に設定されていることが多いので確認しておきましょう。向上心、夢の実現への意欲、リーダーシップなどと具体的に示しているところもあります。出願希望者自身が「ポリシーとマッチングしている」と認識できた場合は、出願してみる価値があります。
資格がなければ総合型選抜に合格するのは無理?
資格が1つもなくても総合型選抜に合格することは可能です。総合型選抜の合否基準は資格を含めて複数あるからです。
資格以外の判断基準には、学科試験の点数や小論文、学外活動、面接などがあります。ただ資格がなければ資格がない分だけ不利になることは否めないため、他の部分で一歩前に出る必要があります。
総合型選抜を受ける上で重要になるのは「自信を持つこと」です。自分自身をポジティブに捉えて、アピールポイントをしっかりと伝える練習をしておきましょう。たとえ根拠のない自信であっても、自信を持つことで相手に良い印象を与えられます。
たとえ学外活動の経験がアルバイトしかなくとも、ネガティブに考えるのは禁物です。アルバイトを通して忍耐力や適応能力、責任感、協調性など、身につけられるスキルは無数にあります。それらを具体的にアピールすれば、相手に響くアピールができるはずです。また、アルバイト先の責任者から推薦状をもらうといった形で活動をなるべく客観化することも重要です。
資格取得における注意点
英検®︎であれば、2級よりも準1級、さらに1級の方が難易度が高いです。総合型選抜に合格したい方は1級を取得したいところですが、決して無理をしないようにしましょう。
高すぎる目標設定はモチベーションを低下させ、結果的に資格取得のための勉強時間を減らすことになりかねないからです。目標は「やや高いくらい」がちょうどよく、逆に低すぎてもやる気が萎えてしまいます。
また、資格はコレクションのように闇雲に集めるのではなく、有用性と将来性を踏まえて挑戦する資格を絞っていきましょう。例えば、入学したい大学を決めた上で、志望する学科との関連性が明確に確認できる資格の勉強を優先するなどです。もちろん出願期限が迫っている場合は、自身の保有資格を照らし合わせて、出願する大学を絞っていく方法もあります。
まとめ
総合型選抜の合否に大きく影響するのが資格です。資格がすべてではないものの、資格があれば自信につながりますし、大学側へのアピールポイントにもなります。特に語学系の資格は強みとなり、多くの大学が総合型選抜における合否の判断基準の1つとして設定しています。
入りたい大学、憧れの大学に総合型選抜で合格したい方は、まずは大学の出願資格と出願要件を確認しておきましょう。実際にどのような資格が有利に働くか、具体的なアドバイスや事例が欲しい方は、総合型選抜の実績を多く持つ個別指導塾などを検討することをおすすめします。