総合型選抜では、志望理由書と合わせてレポート課題が課されることがあります。レポート課題は志望理由書と同じくらい合否に影響するものですが、学校ではレポートの書き方などを教えてくれる機会はあまり多くはありません。
今回は、総合型選抜のレポートの書き方のポイントをご紹介します。書く際の注意点や出題例から実際に書くまでの考え方などをまとめていますので、ぜひレポート作成の参考にしてみてください。
総合型選抜のレポートとは
総合型選抜では、主に学力以外の部分を評価され合否が決定します。志望理由書、面接、グループワークなど、さまざまな課題を課されることがありますが、そのうちの1つにレポート課題があります。
レポート課題は主に学生の考え方を見るもので、願書や志望理由書と一緒に送付するのが一般的です。準備する時間はあるものの、学校などでは教えてもらえる機会が少ないので、作成する際にはしっかりとした下準備が必要です。
大学では、勉強ではなく研究を行うことが一般的です。レポート課題では研究を行う際に必要な論理的思考力や、問題解決に向けた考え方などを確認しています。どんなことに興味があるか、大学で学びたい内容や考え方が、受験する大学の内容とマッチしているかどうかを確認します。
このように、レポート課題は、志望理由書とは別の視点で、大学にふさわしい人物であるかの判断材料になります。
総合型選抜のレポートの書き方のポイント5選
ここでは、総合型選抜のレポートの書き方のポイントを5つにまとめました。作文や小論文とは異なり、論理的な考え方や客観的なまとめが必要になるので、ぜひ参考にしてみてください。
(1)「序論」「本論」「結論」の3部構成
レポートは3部構成でまとめましょう。一般的なレポートの書き方でもありますし、考え方をまとめるのに便利な構成です。
それぞれの構成内容は、以下の通りです。
構成 | 分量 | 内容 |
---|---|---|
序論 | 全体の10~20% | 導入部分。レポートの内容がどのようなものであるか、なぜそのレポートを書くことにしたのかを記す部分です。テーマの切り口は、受験する大学や学部の考え方に沿っているものにしましょう。 |
本論 | 全体の60~80% | 序論で書いた内容について、客観的な事実を踏まえながら論理的にまとめる部分です。自分の考えを主張する場所であり、レポート課題の中で最も重要な部分です。 |
結論 | 全体の10~20% | 本論のまとめをする部分。考え方をまとめ、それを今後どのように活かしていくかを書きます。今後の展望などを書くことで、大学入学後のキャリアイメージをどのように持っているか伝えることができます。 |
例えば、中央大学であれば総合型選抜で課されるレポートは1,000字です。文字数や内容は大学によって異なるので、レポート作成前にしっかりと確認しましょう。
レポートの例文
「地域社会への貢献」というレポート課題があった場合、実際に書くとしたらどのような内容にするか、例文を記載します。レポート作成のイメージにつながるでしょう。
①序論
「東京都で行われているホームレス支援のボランティア活動に参加した経験から、貧困地域で活躍する教育者を目指したいと考えるようになった。」
例文のように、なぜレポートを書くにあたったのか、その考え方に至ったのかのきっかけなどを簡潔にまとめます。1,000字であれば、100文字から200文字でまとめる必要があり、さらに大学側が興味を持つきっかけとなる部分です。
②本論
「ユニセフの世界子供白書2023によると、開発途上国では5人に1人の子どもが学校に通えない状態である。」
「○○部で貧困が生じる理由には、□□のような理由があると思われる。そのためには、●●のような解決策が考えられる。」
「貧困地域の教育者を目指していきたい。そのために大学で〇〇を学びたい。学ぶことで貧困地域での教育に活かせると考えた。」
客観的なデータの提示、それを受けた自分の考え方をまとめます。序論で出てきた課題についてどのように解決していくべきだと考えているかなどを書いていきましょう。
③結論
「大学で学んだ知識や経験を活かすことで、貧困地域の教育活動につなげていきたい。」
本論の内容を踏まえて、今後どう活かしていくかを具体的に書きましょう。大学在学中や、卒業後のイメージが伝わるようにすると評価されます。
(2)「だ・である調」の文語で書く
レポート課題では、基本的に文語の「だ・である調」で書くようにしましょう。大学で作成するレポートや論文などはすべて「だ・である調」で書くため、練習としても最適です。
注意しなければいけないのが、「だ・である調」と「です・ます調」が混在してしまうことです。日常的に「です・ます調」を使っていることから、文章の途中に「です・ます調」が紛れてしまうことがあります。
よくある文語の書き換えをいくつか紹介します。
口語 | 文語 |
---|---|
ちゃんと | きちんと |
でも/だけど | しかし/けれども/だが |
やっぱり | やはり |
とっても/すごく | 非常に/極めて |
「世界には貧困地域がすごく多いと感じた」など、口語と文語が混ざってしまうことも多いです。「だ・である調」でまとめると、一見文語でまとまっているように見えますが、すごくという言葉が口語なので、実際は「世界には貧困地域が非常に多いと感じた」が正しいレポートの文章となります。
(3)事実と意見はしっかり分けて書く
事実と意見は分けて書くようにしましょう。実際に起きていることや事実と、自分の意見が混在してしまうと読み手を混乱させやすくなります。
事実:誰が見ても客観的にわかること、観察されたデータなど
意見:自分がどのように感じたか、自分がどのように行動すべきか考えたかなど
実際の例文を紹介します。
「開発途上国では5人に1人の子どもが学校に通えない状態であり、自分が役に立てないかと考えた」
これが事実と意見が混ざった状態です。この文章では、自分が役に立てないかという意見と開発途上国の現状という事実が混在してしまっています。
「ユニセフの世界子供白書2023によると、開発途上国では5人に1人の子どもが学校に通えない状態である。そのことを知り、自分が役に立てないかと考えるようになった。」
2文に分けることで事実と意見の区別がつきやすく、読みやすいレポートになります。
(4)1文は短く、1段落1トピックを意識する
レポート課題では、1文が長くなっていたり、1段落にさまざまな内容が含まれていたりすると読みづらくなってしまいます。読みやすいレポートを書くためのテクニックを以下にまとめました。
- 1段落1トピックを意識する
- 1文は20〜40文字以内にする
- 段落の文字数は40〜120文字以内でまとめる
- 段落替えの時は1文字分空けた状態で書き始める
細かいことではありますが、この4つを守ることで非常に読みやすいレポートになります。
(5)参考文献は必ず記載する
事前に準備できるレポート課題の場合は、引用した参考文献の記載が必要です。
文献を参考にした場合 |
著作者 タイトル 書籍名 その書籍の発行年 その書籍を発行した出版者 掲載ページ |
---|---|
インターネットのサイトを引用した場合 |
著作者 タイトル サイト名 情報公開日 サイトのURL 参照した日 |
ページ数を記載するときは「p.6」というように記載し、参考にした部分が複数ページの場合は「pp.14〜25」というように記載します。
細かいルールは課題に記載されていることが多いので、しっかりと確認しましょう。
総合型選抜のレポートは2種類
総合型選抜のレポートは、主に2種類あります。それぞれの特徴についてまとめました。
課題考察型
課題考察型のレポートは、志望理由書や願書と一緒に提出するタイプのものです。下調べができる反面、他の受験者のレポートの質も高いので準備にどれだけ時間を使えるかが重要です。
講義受講型
講義受講型は、総合型選抜の受験のときに会場でレポートを書くタイプです。事前準備などもできず、講義内容も明かされていません。受講内容をメモし、その内容を元に自分の意見を書くため、時間や構成の作成が非常に難しいです。
最近では講義受講型のレポート課題も増えてきています。
総合型選抜のレポートを書く際の注意点
ここでは、総合型選抜のレポートを書く際の注意点をまとめました。
議論の切り口を意識する
文章を書く際、自分の意見を大学の方針と併せておく必要があります。例えば、自分の意見と大学の目指す部分が異なる場合、どんなに良いレポートを書いたとしても基本的に合格にはなりません。その大学でどのような勉強をしたいか、それが課題解決にどのように繋がるかなどを具体的に書きましょう。
大学が提示しているアドミッションポリシーを確認しておくと、入学後のキャリアイメージが湧きやすくなるでしょう。
字数制限など条件を守る、フォントなどの体裁をそろえる
レポート課題の場合、文字数や紙のサイズ指定があります。条件を守らないとそもそもレポートを読んでもらえず、自動的に失格となる可能性があるので、十分注意しましょう。文字数に関しては、指定文字数の90%まで書くのが基本です。例えば3,000文字のレポートであれば、2,700文字以上は書くことを意識しましょう。
また、パソコンを使ってレポートを作成する場合は読みやすいフォント、文字の大きさで書くことも大切です。文字数カウント機能や、校閲ツールも活用すると良いでしょう。
誤字脱字に気を付ける
誤字脱字がある場合は、減点されてしまいます。誤字が多ければ多いほど減点も多くなってしまうので、書き上がったレポートはしっかりと目を通すようにしましょう。
実際の出題例
ここでは、実際の大学のレポート課題の出題例を紹介します。
中央大学 法学部
①あなたがこれまでに実践してきた活動について説明してください。(1,000 字程度)
②あなたが関心のある事柄や社会問題について記述してください。(1,000 字程度)
③大学で何を学び、どんな学生生活を送りたいか、具体的に説明してください。(1,000 字程度)
引用:中央大学法学部
中京大学 国際学部 国際学科
あなたは総理大臣の外交問題補佐官です。先日、9月12日に閉幕したASEAN外相会議について、総理大臣に提出するブリーフィング用レポートを作成してください。それには以下の内容が書かれている必要があります。
① ASEAN外相会議が開催されたときの周辺情勢。
② ASEAN外相会議での課題はなんであったのか。
③ ASEAN外相会議の結果をどう評価するか。
④ ③を踏まえて、今後の日本外交への提案。
以上を2,500〜3,000字程度でまとめてください。
引用:中京大国際学部
九州大学 共創学部
講義に関するレポートは、受験者が2つの講義(各約50分)を受講して、それぞれその後に休憩(各約10分)を挟みレポートを作成(各約90分)するものです。その際、配付資料に英文を含む場合や、講義の一部が英語で行われる場合もあります。(電子式ではない辞書2冊まで持ち込み可能です。)
主に、
・講義内容をどれだけ理解できるか。
・講義内容の魅力を見出し、より正確に深く知りたいという気持ちをどれだけ持ち得るか。
・講義の内容からさらにどれだけ発展させて考えることができるか。
・説明を理解し、うまく実行できるか。
などを評価します。
講義の内容はそれぞれ文系の内容を主とするものと理系の内容を主とするものとなります。第2日目午前の討論の前に、前日の各講義に関する論題をそれぞれ一つ提示し、討論及び小論文はこの論題に沿って行います。
引用:九州大学共創学部
レポートを極めることで総合型選抜の合格が近づく
今回は、総合型選抜のレポートの書き方のポイントをまとめました。
レポート課題は願書や志望理由書と一緒に送付することが多いので、準備時間は十分にあります。本記事の内容をしっかり理解し、ポイントを押さえたレポートを作れるようにしましょう。そうすることで、総合型選抜試験で合格できる確率が高まります。
レポートの準備は、大学ごとに対策も異なるため、ぜひ個別で対策することをお勧めします。総合型選抜を専門とする塾を適切に利用し、レベルアップを図りましょう。