総合型選抜は、志望理由書や面接、小論文といった個別の対策が求められる入試方式です。その対策を効率的に進めるためには、大学ごとに異なる多種多様なスケジュールを把握し、それに合わせた準備を計画的に行うことが重要です。私立大学と国公立大学では選考プロセスや日程に違いがあり、事前の情報収集と計画的な準備が欠かせません。
本記事では、総合型選抜の時期に関する基礎知識、私立・国公立大学それぞれの具体的なスケジュールや準備のポイントを解説します。また、総合型選抜にとって重要度の高い、関連の検定試験の時期についても触れていますのでぜひ参考にしてください。
私立大学・国公立大学 それぞれの時期の比較
私立大学と国公立大学の総合型選抜の日程には、出願開始時期や選抜試験の実施時期では差があるものの、全体的な流れとして重なる部分が多く見られます。
国公立大学は2パターンの出願期間に分かれている傾向があります。ただし、2つのパターンのうち前期日程に該当する部分は、私立大学のスケジュールと似通っている点も多く、全体としては共通点が見られます。
以下の表に、私立大学と国公立大学それぞれの一般的なスケジュールを掲載しました。この情報を基に両者を比較しつつ、総合型選抜の時期をおおまかに把握するための参考にしてください。
【総合型選抜の一般的な日程比較表】
< 私立大学 > | < 国公立大学 > | |
---|---|---|
出願エントリー (※一部の大学) |
5月中旬~8月下旬 | 5月中旬など |
出願期間 | 9月上旬~ |
①9月中旬~11月上旬 ②1月上旬 |
選抜試験の実施時期 | 9月中旬~ |
①10月上旬~11月中旬 ②1月下旬~2月上旬 |
合格発表 | 11月上旬~ |
①11月下旬~12月上旬 ②2月中旬以降 |
最終的なスケジュールは各大学によって異なるため、志望校の具体的な日程を早期に確認することが欠かせません。
総合型選抜を利用する受験生は一般入試に比べてまだ少数で、高校が最新の情報を把握していないケースもあるため、受験生自身が大学の募集要項を確認することが求められます。また、私立大学と国公立大学では併願の可否や専願のルールにも違いがあるため、自身の進路希望に合わせて計画を立てましょう。
私立大学の総合型選抜試験の実施時期
基本的な日程
私立大学の一般的な日程は以下の通りです。
- 出願エントリー:5月中旬~8月下旬(※一部の大学)
- 出願:9月上旬~
- 試験:9月中旬~
- 合格発表:11月上旬~
ただし、国公私立を問わず、例外的に非常に早い時期に選抜を実施する大学も存在します。特に出願や試験が通常より早いスケジュールで進行する場合があるため、志望校の入試日程を早急に確認することを強くお薦めします。事前の確認を怠ると、出願や試験準備が間に合わない可能性もありますので、計画的に準備を進めていくことが大切です。
具体的な実施時期の事例
■東北学院大学 工学部 A日程
出願期間:①9月上旬/②10月下旬
試験日程:①9月下旬~10月上旬/②11月中旬
合格発表:①10月中旬/②12月上旬
■慶應義塾大学 法学部 FIT入試A方式
出願期間:8月上旬~9月上旬
試験日程:9月下旬
合格発表:11月上旬
■早稲田大学 国際教養学部
出願期間:9月上旬
試験日程:10月下旬
合格発表:11月下旬
■日本大学 工学部 第1期プレゼン型
出願期間:9月初旬
試験日程:9月中旬
合格発表:11月上旬
■近畿大学 経済学部 A方式グローバルキャリア志向型
出願期間:9月上旬
試験日程:10月中旬
合格発表:11月初旬
■西南学院大学 外国語学部 総合型(学びと探求型)
出願期間:9月中旬~9月下旬
試験日程:10月中旬
合格発表:11月初旬
国公立大学の総合型選抜試験の実施時期
基本的な日程
国公立大学の場合、大まかに2つの日程パターンに分かれています。
■パターン①
- 出願:9月中旬~11月上旬
- 試験:10月上旬~11月中旬
- 合格発表:11月下旬~12月上旬
■パターン②
- 出願:1月上旬
- 試験:1月下旬~2月上旬
- 合格発表:2月中旬以降
国公立大学の場合でも、大学によっては出願期間前にスクーリングへの出席を伴う「早期スタート」を実施するケースがあったり、9月~10月に出願し、共通テスト終了後の翌年2月に合格発表があるような「長期間タイプ」を採用しているケースもあったりするので、上記2パターンのどちらにも属さない事例もあります。
総合選抜型入試では、国公立大学においても特色を打ち出した入試方式を採用しているケースもありますので、正確な情報の把握を徹底しましょう。
具体的な実施時期の事例
■北海道大学 理学部 フロンティアⅠ方式
出願期間:9月中旬
試験日程:11月中旬
合格発表:2月中旬
■国際教養大学 国際教養学部 グローバル・ワークショップ方式
申し込み期間:5月中旬
出願期間:9月中旬
試験日程:10月中旬
合格発表:11月上旬
■金沢大学 人間社会学域 総合型Ⅱ
出願期間:11月上旬
試験日程:12月上旬
合格発表:2月中旬
■千葉大学 教育学部
出願期間:9月上旬
試験日程:9月下旬
合格発表:内定11月上旬/最終2月中旬
■広島大学 総合科学部 光り輝き入試Ⅰ一般形
出願期間:10月上旬
試験日程:11月中旬
合格発表:12月上旬
■鹿児島大学 理学部 自己推薦型
出願期間:11月上旬
試験日程:12月中旬
合格発表:2月中旬
総合型選抜に関連性の高い各種検定試験の時期
総合型選抜入試では、志望学部・学科によっては、出願資格として各種検定試験の結果が求められる場合があります。必須ではない場合でも、自分の強みとして検定結果をアピール材料に活用することもできます。各種試験の合格状況やスコアが合否に与える影響が大きいとする見方もあるので、検定の実施時期を確実に把握し、効果的に活かせるよう準備を進めることはとても重要です。
なお、掲載している時期についての情報は変更されることもありますので、必ず公式ホームページで受験年度の正確な日程を確認しましょう。
英語関連の検定試験
■実用英語技能検定(英検®︎)
・従来型の試験は年3回
・英検S-CBTは原則的に毎週土日に実施
※英検®︎2級以上が求められる場合が多く、準1級以上でさらに有利になるケースもあります。
出典:実用英語技能検定公式ホームページ
■TOEFL iBT
・毎月数回実施
※大学によって求められるスコアの目安が異なり、45点以上が最低基準として設定される場合や、国際系学部などでは80点以上が重視される基準となるほか、スコア換算方式を採用して評価する大学もあります。
出典:TOEFL iBT公式ホームページ
■IELTS
・ペーパー版は全国各地の会場で年に複数回実施
・コンピューター版は東京・大阪、ほぼ毎日実施
※特に国際系学部で評価されることが多いです。
出典:IELTS公式ホームページ
日本語や数学関連の検定試験
■日本漢字能力検定(漢検)
・年3回(6月、10月、2月)実施
※50%以上の大学で評価対象となる調査結果があります。
出典:漢字検定公式ホームページ
■実用数学技能検定(数検)
・A日程とB日程を含めると、ほぼ毎月実施
※理系学部志望者にとってアピールポイントとなる場合があります。
出典:数学検定公式ホームページ
その他の検定試験
■情報処理技術者試験
・ITパスポート:CBT方式で通年実施
・基本情報技術者:CBT方式で通年実施
・応用情報技術者:春期(4月)・秋期(10月)実施
※情報系学部で評価されることが多いです。
出典:情報処理技術者試験ホームページ
時期別に見る総合型選抜の準備
総合型選抜(AO入試)の準備は、時期ごとに異なるアプローチが求められます。以下の4つの段階に分け、それぞれで取り組むべきポイントを解説します。
- 高校入学前の時期から意識しておくべきこと
- 高校1年生・2年生から始める準備
- 高校3年生の春~夏にすべきこと
- 出願直前期にすべきこと
これらを順に見ていきましょう。
高校入学前の時期から意識しておくべきこと
総合型選抜入試では、高校在学中の活動や実績が評価の中心となります。しかし、どの中学や高校に進学するかが、その後の準備や活動の環境に大きな影響を及ぼすことも事実です。
例えば、課外活動が充実している学校や、総合型選抜を視野に入れた指導を行う学校を選ぶことは、総合型選抜に向けた取り組みをスムーズに進める重要な選択肢となり得ます。
また、中学時代の検定試験結果は、出願資格として認められない場合が多いものの、高校入学後の本格的な受検に向けた練習として活用することもできます。英検や数学検定などを中学時代から受験しておくことで、試験の形式や内容に慣れ、自信を持って臨むことができるようになります。
こうした進路選びや検定試験の活用については、保護者様の意識やサポートも重要です。高校選びの基準を整理したり、検定試験の計画を立てたりする際に適切なアドバイスをすることで、受験生自身が安心して準備に取り組む環境を整えることができます。
高校1年生・2年生から始める準備
この時期から意識することとして、以下が挙げられます。
- 学力の維持向上
- 課外活動への取組み
- 上記を含めた志望理由書の作成と改良
総合型選抜は、学力だけでなく受験生一人ひとりの様々な面を評価する入試です。部活動での実績、ボランティア活動、資格や検定試験の成績などをアピールできることが特徴です。
それらの準備期間として、高校1年生や2年生の段階から総合型選抜の対策に向き合っていくことは、理想的な結果を得るために不可欠と言えます。
例えば、英語外部資格試験などの試験をパスするためには継続的な準備が必要ですし、ボランティア活動も大学側に評価されるレベルの質を実現するためには、一定以上の長期的な取組みが必要です。
同時に、これらの活動を通じて、自分自身が志望校のアドミッションポリシーや大学が求めている人物像に合致していることを、志望理由書で的確に伝える必要があります。そのためには、実際の活動や取組みを実践しながら、志望理由書の骨子を練ったり、実際に作成しつつより高い完成度に仕上げたりするためのブラッシュアップも必要です。
また、大学が求める人物像に合致していないと判断し、志望校を変更することももちろん選択肢のひとつとなります。例えば、海外の大学に志望変更する場合などは、遅くとも高校2年生までには志望を固める必要があります。
高校3年生の春~夏にすべきこと
この時期からは、面接や小論文の対策をスタートしましょう。そのためには、1~2年生で取り組んできた中で得た学びや成長を通じ、将来的なビジョンを明確にしつつ、志望理由をより鮮明にしていくことが重要です。
その上で、志望校の過去の傾向に沿った面接での受け答えの準備、模擬面接の実践、小論文をどのような構成で作成するのかなど、より具体的な準備をスタートさせます。
出願直前期にすべきこと
出願直前の時期には、これまで進めてきた準備の最終的な確認をしつつ、出願書類を揃えたり、提出方法を確認したりするなどの作業を実施していきましょう。また、面接時に骨太な受け答えにつながるよう、一般選抜向けの学習も取り組めるとなお良いでしょう。
総合型選抜の時期に関わるよくある質問
■複数の大学で総合型選抜を受験することは可能ですか?
総合型選抜に関して併願を考える際は、国公立大学と私立大学を分けて考えるとわかりやすいです。
国公立大学の場合は、基本的に専願のみとなっています。国公立大学を総合型選抜で受験し合格した場合は、必ずその大学に入学する必要があります。
私立大学の場合は、難関私立大学でも併願が可能なケースが多い傾向にあります。ただ、大学によっては専願を推奨している大学もあります。
■総合型選抜で合格した場合、入学手続きの時期はどうなりますか?
入学手続きの締め切りに関しては大学によって詳細は異なりますが、合格発表があった後、1~2週間後程度に締め切りを設定しているケースが多くなっています。
■出願とエントリーは時期が異なりますか?
大学によっては出願前にエントリーが必要な場合があり、出願とエントリーでは時期が異なります。出願よりかなり前にエントリーが必要な大学もあれば、出願より数週間前にエントリーがスタートする大学もあります。エントリーが必要な大学は、エントリーを済ませないと出願できませんので注意が必要です。
■総合型選抜の出願時期や試験日程が例年と異なることはありますか?
年度によって日程が変更される可能性はあります。時期的な要因だけでなく、募集要項の内容や方式、条件なども変更される場合があります。志望校の募集要項が公開されたら、いち早く確認することが求められます。また、コロナパンデミックなど社会情勢の急激な変化により、日程がかなり大きく変わることもあります。
まとめ
総合型選抜(AO入試)の時期は、私立大学、国公立大学共に選考プロセスや日程に独自性があるため、出願期間、試験日程、合格発表に至るまで各大学によって異なっていることが特徴です。それにより、受験生に求められる準備や注意点も異なってきます。特に、オープンキャンパスやスクーリングなどへの参加が必要な場合もあるため、募集要項をできるだけ早い段階で確認することが求められます。
例年とは日程や条件が異なる場合もあり、変更の可能性も考慮した柔軟な準備・対応が求められますが、最新情報を適切に収集し、計画的に準備を進めていくことで、安心して試験に臨むことができます。十分な準備と柔軟な対応力が、総合型選抜での成功への鍵となります。こうした個々に異なる対策が必要な総合型選抜は、個別指導やチュータリングを適切に受けることで合格率を高めることができます。オンラインで対応している塾もありますので、受験の伴走者として、ぜひ個別指導を検討してください。